研究概要
核酸医薬などの中分子医薬は、従来の医薬品では治療困難だった疾患に対する新しい創薬モダリティとして注目を集めており、国内外でその開発研究は年々活発化しています。十数年ほど前まで、オリゴ核酸は生体内安定性が医薬応用には不十分であるなどの課題がありましたが、現在では、核酸の化学修飾技術(人工核酸などの活用)の急速な進歩により、臨床研究に求められる高活性な核酸医薬を取得できるようになってきました。
しかし、核酸医薬に代表されるオリゴヌクレオチドは一般に細胞膜透過能が低く、それが核酸医薬の実用化の障害となっています。この課題を克服するべく本領域では、核酸科学の枠を超えた異分野融合研究によって、一般性、汎用性が高い核酸医薬・中分子医薬の革新的な細胞内送達技術の開発に挑みます。新しい膜透過機構とは「細胞膜をゆらす」 膜モジュレータ分子により、一時的に乱された細胞膜を核酸医薬が通過するというものです。本手法は従来の技術と比べ、膜表面の性状に依存しない(細胞の種類に依存しない)直接的な薬物の細胞内送達が可能になると考えられます。